無類の電子工作好き少年だった井川。小学生の頃からラジオの組み立てに没頭したりアマチュア無線の免許を取得したり、電子工作に対する興味は深まるばかり。

井川「中学校に進学する頃にはアンテナや受信機に改良を加え、自分だけの無線機を作っていましたね」

 当時から将来の仕事は電気関係と決めていた井川は、やがて高校に進学し、卒業と同時に電子パーツ関連のショップに就職。すぐにスバルのレオーネを新車で購入している。折しも井川がクルマを購入した当時は、カーコンポとして大手メーカーがカーオーディオの
ユニットをリリースし始めた時期。その背景が、後に井川をカーオーディオの道へ進ませることとなる。

井川「クルマの中でも好きな音楽をイイ音で聴きたい。そんな単純な理由でカーコンポを衝動買いしてしまったことを覚えています(笑)」 

 やがて購入したカーショップでのポン付け的な取付けではもの足りなくなった井川は、電子工作で培った技術をオーディオのインストールへと向け始める。その第1段階は、スピーカーのバッフル制作だった。


井川「ホームオーディオの本を参考に独学で着手しました。このとき初めて"手を加えれば音が変わる!!"ということを知り、感動しましたね!」

 この出来事をきっかけに、スピーカーケーブル類の変更などにも着手。そして日々のインストールでノウハウを蓄積した井川は、プロとしてカーオーディオにかかわっていくことを改めて決意し、早くも独立。

井川「思い立ったら即実行という勢いで独立しましたが、当時はプロショップなどという概念自体もまだありません。そこで、もっぱらディーラーの下請けという形でオーディオの取り付け作業を行っていたんです。」

 しかし、井川はディーラーからのマニュアル的な取り付け注文をこなす作業に疑問を感じ始める。直接ユーザーと接し、自分の作った音を味わってもらいたい。そんな思いから自らのショップを持ちたいと考えた井川は、日本にはまだなかったプロショップの形態や音作りについて学ぶため、単身アメリカへ渡る。

井川「まずハワイに行ってプロショップを何軒も回りました。日本との大きな違いはインストール自体に力を入れていることと、強く芯のあるサウンド。音でユーザーに感銘を与えるというスタイルが、すでに当時から定着していたんですね!」

 井川がハワイへ行った当時。日本は派手なヘッドユニットを使用しスピーカーは数多く取り付ける、というスタイルが主流だった。しかし井川は確信していた。"インストールに力を入
れ、音によって感銘を与える。そんなスタイルが、これからの日本でも必ず必要になる"と。

 そんな井川は弱冠22歳でプロショップ・オーディオボックスをオープンさせる。まだ全国的にもプロショップが一般的でなかった時期、本当に一般ユーザーに受け入れられるのか・・・・。しかしそんな不安はすぐに解消される。良い音に飢えていたユーザーは、専門店ならではの高い技術力を放っておかなかったのだ。 順調に滑り出した自らのショップ。そんなショップを支える音作りには、ある経験が生かされていた。

井川「ショップを開いて数年たったころ、以前から憧れていたFM局のDJに応募し採用されたんです。週1本のレギュラーを、ショップとの掛け持ちでこなしていましたね!」

 当時使用されたレコードは、オンエア直前に汚れがないかをチェックする必要がある。そこで使ったのがプロ用のモニタースピーカーだった。 


井川「それまで自分が体感した音とはまるで違う世界。人の声が人の声として感じられる生々しい音。これをクルマの中で出したい・・・・。これで私の音作りの方向性が決まりました」

 モニタースピーカーの音を実現するために、まず井川が着手したのがネットワークの開発。しかも車種別の設定が施されている完全オリジナルの製品を用意することだった。

井川「汎用品じゃなくて、クルマやシステムに合わせたネットワークで狙った音を再現しようと思ったんです」

 さらにケーブルや防震キットなど、次々と自社製品を開発。そのいずれもが、モニタースピーカーの音を車内で再現するために必要なアイテムばかりだった。そして2年前には、ついにスピーカーまでを開発!

井川「開発の中でさまざまなデータやノウハウを蓄積しましたが、これを自分だけのものにしておくのはもったいないと思いました。それが全国的なグループ展開のきっかけでした」

 そして同ショップは2000年から広いショールームや空調完備のカーピットなどを備えた『サウンドピュアディオ』へと進化。各店舗にはプロ用のモニタースピーカーを設置して、井川の狙う音をユーザーに確認してもらうことでユーザーとのコミュニケーションも図っている。 

井川「録音したときの音をより忠実に再生することが、リラックスできる音につながるんです。自然に感じさせながらも感銘を与える美しい音・・・。それをクルマの中で表現していくことが、私の仕事でもあるんです」

 あくまでもモニタースピーカーの音にこだわり、音によってユーザーに感銘を与える。そんな井川の考え方は、全国のグループ各店に浸透する共通のスピリットとなりました。新しいプロショップのスタイルを井川が、そしてサウンドピュアディオグループが発信しはじめます。

   

 

(CARAUDIOmagazineより)