1986年1月 自分の人生を変える衝撃的な音との出会いが有りました。
 このころ、自分の愛車パルサーにはドアに13cmのメタルコーンスコーカー、ドア前方上部にフラットなリボンツィーターをリアトレイには20cmウーハーを2発取付けていて、3WAYのチャンネルディバイダーでマルチ駆動していました。自分ではメリハリの効いた良い音だと信じていました。ある人の紹介で、週に一本の番組を民放FM局で作る事になり、FM局のスタジオに出入りする事になりました。
 今までに聴いた事の無かった大型のプロ用モニタースピーカーの音! 今までの自分のカーオーディオの世界はなんてチープでボーカルが薄い音なのだろうと思えてきました。一番ショックだったのは、編集用のオープンリールデッキの横にあったわずか10cm位のスピーカーから出て来る音の良い事! クリアーで嫌味の無いボーカルには絶句しました。
 自分のパルサーはどこかドンシャリで、今考えてみればウケ狙いというか媚びているというか、日に日に耐えられなくなってきました。おそらくレンジローバーのデモカーの音を聴いたお客様が「毎日頭の中をあの音がグルグル回っている。」と言われるようなそんな感じが自分の頭の中で起こっていました。「悔しい!自分の車であの音を出したい!」と、まずはプロ用モニタースピーカーを購入して、ひたすら毎日自分のCDを聴き込みました。
 それからの自分は、とにかくフロントスピーカーではっきりとボーカルをならす事、こもった音域をイコライザーやチャンネルディバイダーでスポイルしても何の解決にもならない事など多くの事を学び、ドアの防振のやり方も根本から変えました。今でも自分の恩師であるプロ用モニタースピーカーの音を聴かない日はありません。
 よく「お客様の好みに合わせた音に作る。」とか、「音楽ジャンルに合わせて音を変える」とか言われていますが、本当に良い音とは一つしかなく、例えばレコーディングスタジオのミキサールームでレコーディングエンジニアが聴いているモニタースピーカーの様な音ではないかと思います。
 20年前に自分が受けた感動を今年も多くのお客様にお届けしたいと思います。

ピュアディオグループ代表 井川和隆